仕事で遺言書を書くお手伝いをすることがあります。公証役場で書く公正証書遺言の証人になったり、遺言の形式や要件のアドバイスをしたりします。

「遺言」ときくと「死」を連想するので、不吉な感じがするのか眉をひそめる人もいます。私が仕事をはじめた十数年前は遺言についての相談はほとんどありませんでした。

しかし、いまでは遺言についての相談はごく普通のこととなっています。新聞やテレビ、雑誌などのマスコミの影響が大きいのかなと思います。ただ、その根本には、不安があるのではないかと感じます。

「知り合いのところで相続争いがあった。」「息子、娘は県外に行って夫婦二人暮らしだ。」「お墓は誰が守ってくれるんだろう。」「商売の後継者がいない。」・・・

それぞれの不安(課題)を抱えて、それをどう乗り越えていこうかと考えて、遺言の相談にいらっしゃるようです。

 遺言を考えている方に共通するのは、自分のこれからの人生と死後の残された家族のことを考えていることです。「子どもたちにはいつまでも仲良くしてほしい」「○○家を守りたい」「孫の成長をできるだけ長く見届けたい。」様々な想いを胸に遺言を残されます。

人が亡くなって土地や建物などの財産が承継されますが、それとともにその方の想いも一緒に引き継がれるのだと感じます。

先日、ある高齢の女性が「亡夫と自分が苦労して築いた土地建物を都会へ行った次男、三男にも少しは分けてあげたい」と話していました。そうすることで、たとえ将来自分が生まれた家が取り壊されても生家への想いを持ち続けることができるだろうとのことでした。

遺言に書くのは、財産のこと、お墓のこと、葬儀のことが多いようです。遺言を書いた方が亡くなれば、その遺言書をもとに預貯金や土地建物の名義替えをして財産を承継します。私たち司法書士はその手続きのお手伝いをします。

遺言書にはほかに、自分の想いを綴ることができます。「どうしてこの遺言を書いたのか」「将来、残された家族にどのようにしてほしいのか」などを記します。自分で便せん等に書いても良いですし、公証役場にいる公証人という方に書いてもらう方法もあります。

自分の想いを「遺言書」というかたちで残す。このスタイルが広まりつつあると私は実感しています。それは、財産とともに想いを残すことであり、そこにはいつ訪れるか分からない死を意識した緊張感が漂います。